駐妻キャリアnet代表・三浦梓さんが語る「場所にとらわれない働き方」と宇都宮での挑戦
「キャリア×ブラジル駐在×ワークライフバランス」
三浦 梓 氏

プロフィール
1981年生まれ。大学院卒業後、リクルートに入社。営業、商品企画、人事として10年間従事。その後外資戦略コンサルティングファーム、A.Tカーニーにて日本採用責任者従事後、友人と会社を立ち上げCOO就任。2020年1月夫のブラジル赴任に帯同。同年11月「働きたい駐妻を支援する」駐妻キャリアnet代表就任。夫の転勤により宇都宮に引っ越し、専門人材マッチング、女性のロールモデル創出、企業の海外進出支援を通じて、国境を超えたキャリア構築支援をしながら、「女性が働きたい時に、いつでもどこでも働ける社会」の実現を目指す。2025年7月宇都宮市男女共同参画審議会公募委員就任。
― 現在の主な活動内容とミッションは何ですか?
〇 プロフィールと活動概要
現在は、「駐妻キャリアネット」での活動に加え、国内での取り組みも展開しています。駐妻キャリアネットとしては、海外での専門性のある仕事を継続できる機会の提供を中心に行ってきましたが、今後は、就労ビザの問題で企業がNGを出しているケースのルール撤廃に向けた企業連携を進めています。
自身のミッションは、「女性がいつでもどこでも働ける社会の実現」であり、駐妻だけでなく、国内転勤者や介護・育児で離職せざるを得なかった方々にも、仕事の創出や大学院への進学、ボランティア機会を提供していきたいと考えています。
リクルート退職から起業、そして駐在妻へ。激動のキャリア変遷
― 幼少期や学生時代、キャリア形成に影響を与えたことは何ですか?
• キャリアの転換: 中学2年生の時に祖母を癌で亡くしたことから、癌をなくす薬の研究者を目指し、高校まで理系でした。しかし、政治家の演説を聞き感銘を受け、政治家になろうと決意しました。国立理系から私立文系への真逆の進路変更をしましたが、迷いはありませんでした。
• 大学時代の経験:大学では、ベンチャービジネスの経営ゼミで学びました。
―リクルート入社からご自身の会社を立ち上げるまでの経緯を教えてください。
リクルートへの就職は、「人の生活や人生に関わる事業であること」と「自己成長が早い会社であること」の2点を観点に選びました。
(1)リクルートでの経験: 営業部長の助言により、営業力、企画力、採用力が必要だとして、営業、企画、人事の3職種を3年ずつ経験し、リクルートを卒業しました。
(2)東日本大震災での経験: 2011年4月、東北大震災後に、住宅情報誌の復刊プロジェクトリーダーを経験しました。赤字覚悟の発行でしたが、実際には多くの不動産会社が掲載に乗り出し、数字的にも良好でした。何より、ボロボロのスーツを着た人が「こういうのを俺たちは待っていた。自分たちはもう被災者じゃない、前を向いているんだ」と言って雑誌を持っていかれた際に、本当の意味で人の役に立つ仕事ができたと実感し、涙が出たこと、この出来事が仕事への向き合い方が変わったことが大きな経験となりました。
(3)起業: リクルート卒業後、個人事業主を経て、戦略コンサルティングファーム(ATカーニー)で日本での採用責任者を務めました。その後、「自分の能力以上の仕事をやって成長して壁を壊していく」ことにモチベーションを感じ、友人と共にヒューマンブランディングの会社を立ち上げました。


「時給980円」の衝撃。ブラジル駐在での挫折と再起
― ブラジル駐在が決まった時の状況と、キャリア継続への不安について教えてください。
〇 駐在とキャリアネットの活動
夫のブラジル転勤で行くことを決断しました。実際にブラジルへ行ってみると、ポルトガル語の習得が難しく、想定していた現地での会社設立を断念。また、日本での人事経験を活かせる仕事を探しましたが、提示された仕事は「時給980円のインタビュー動画の文字起こしや社長の日程調整」しかなく、「海外に行くだけでこんなに自分の市場価値が落ちてしまう」と目の前が真っ暗になりました。
― その「暗黒時代」からどのように立ち直ったのですか?
〇 同じ悩みを持つ人を探す
同じ悩みを持つ人を探す中で、ブラジルで駐妻キャリアnetという団体を見つけました。運営メンバーとして関わりたいと考えていたところ近所に住む駐妻の友人も運営メンバーをしていることを知り、その友人を通じて当時の代表にサンパウロまで会いに行きました。その場で仕事がしたいと伝えたところ、2020年3月に運営メンバーとして活動を開始しました。
― 駐妻キャリアnetではどのような活動をされましたか?
• 代表就任と100人インタビュー: 2020年11月に3代目の代表に就任しました。人の数だけキャリアの道がある。100人100通りの駐妻キャリアロールモデルを創出したく、「駐妻キャリア100人インタビュー」を思いつきました。
• ロールモデルの創出: 駐妻=働けないというイメージを払拭したく、あえて海外で働くことに興味のある女子大生8人がインタビューライターを担当しました。以前津田塾大学で講演を行った際、その場に集まった70人の女子大生にアンケートを行ったところ、最も多かった回答は知らないと答えたため、女子大生ライターには純粋な興味を持って挑んでもらいました。
第2の故郷・宇都宮から発信する「女性が働きたい時にいつでも、どこでも働ける社会」
― 日本に帰国されてからの宇都宮での活動について教えてください。
〇 「第2の故郷」宇都宮
2024年3月に帰国し、4月から宇都宮に住んでいます。宇都宮は、熱狂的なスポーツ(ブレックス)の応援文化があり、保守的という印象とは異なりアグレッシブな方たちが多いという印象を受けました。
宇都宮市役所が実施している宇都宮ベンチャーズに相談に行った際、快く受け入れていただき、コミュニティマネージャーや市役所の方々が親身にアドバイスをしてくれました。
現在、宇都宮は「第2の故郷」と感じるほど大好きになり、男女共同参画推進の審議会委員にも参加しています。
ブラジル流に学ぶ、人生を楽しむための「ワーク・ライフ・バランス」
― ワーク・ライフ・バランス(WLB)について、どのように考えていますか?
〇 自分らしい生活リズム
日本にいた頃は「平日は仕事、土日は休み」という固定観念に縛られていました。 でもブラジルの人々は違いました。平日の昼間にビーチテニスを楽しみ、カフェで友人と語り合い、そして午後や夕方からまた集中して働く。彼らは「人生を楽しむこと」と「仕事で結果を出すこと」を対立させていなかったのです。この経験から、私は自分の居心地のいいスタイルがわかりました。仕事に没頭した後、 しっかりリラックスする時間を持つ。すると不思議なことに、頭も心もクリアになり、再び仕事に向かうエネルギーが自然と湧いてくるのです。バランスとは、時間を均等に分けることではなく、自分らしいリズムを見つけることなのだと気づきました。
― 日本で働く会社員が、その考え方を取り入れるには?
〇 「自分のための時間」を意識的に作ってみる
完璧に真似する必要はありません。大切なのは「自分らしいリズム」を探すことです。私の知り合いには、昼休みに必ず外を15分散歩する人、早朝の1時間を読書に充てる人、水曜日の夜は必ず趣味のクラスに通う人がいます。週末に疲れを癒すだけでなく、平日に小さな楽しみを散りばめることで、毎日がもっと充実します。まずは週に1回、「自分のための時間」を意識的に作ってみてください。それがあなたのワーク・ライフ・バランスを見つける第一歩になります。
― 現在、目標とするロールモデルはいらっしゃいますか?
最近、茨城県の起業家イベントで出会った、授乳服を販売している光畑由佳さんという社長がロールモデルになっています。光畑さんは、子育てをしながら働く中で、どこでもすぐに授乳できる服を開発しました。
光畑さんの服を利用した方々から「この服がなければ働くことを諦めていた」という声を聞き、自分がやったことが後々、その人の人生に影響を与え、役に立てたという話に感銘を受けました。
― 女性ならではの視点を活かした「成功事例」はありますか?
〇 寄り添う力
女性は、相手の悩みを引き出す共感力や寄り添う力が強いと考えています。ブラジルでの自分の市場価値が落ちた感覚や突き離された経験から、寄り添うことの重要性を感じました。女性は、ただ話を聞くだけでなく、「私もそうだった」という経験を共有することで、相手が「自分にもできるかもしれない」と自分に重ねる部分ができるため、これが強みとして活かされていると感じています。


悩みもがく女性たちへ。「心のモヤモヤ」を書き出すことから始めよう
― 今、悩み、もがいている女性たちへメッセージ
1. まず、心のモヤモヤを文字にしてみてください
「なんとなくモヤモヤする」「なぜか苦しい」——その漠然とした感情を、ノートに書き出すだけでいい。誰に見られるでもないので、思いつくことを書く。すると不思議なことに、同じ言葉や類似の言葉が何度も並んでいることに気づくはずです。それがあなたの本心。心の奥底に隠れていた、本当の想いなのです。
2. 同じ悩みを持つ人から、解決のヒントを見つけましょう
みちしるべが見つかったら、同様な経験をした人を検索してみてください。きっと、同じ壁にぶつかり、それを乗り越えた人との出会いや、解決方法の糸口が見つかります。その人たちの物語に触れることで、自分もこの方法を同じように進みたいと参考になる道が見えてくる。全部を真似する必要はありません。一部でも参考になる解決のヒントを見出せれば、それが大きな一歩になるのです。
3. そして何より、自分に優しくしてください
悩みを言語化できても、すぐには動けないこともある。それでいいんです。心が動き出すのを待つことも、立派な一歩です。「連絡しなきゃ」「行動しなきゃ」と自分を追い詰めないで。焦らず、無理せず、あなたのペースで。休むことは、逃げることじゃない。次に進むための、大切な充電時間なのですから。

このページに関するお問い合わせ
総合政策部 女性活躍推進課(市役所5階)
電話番号:028-632-2346 ファクス:028-632-5422
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。













