「何かできる自分でいたい」-つながりを力に、自分らしい働き方を探して
自分らしいペースで、可能性を広げる
樋熊 栞(ひぐま しおり)氏

高等専門学校で電気情報工学を学び、卒業後は地方テレビ局の放送技術職として、撮影、番組送出、機器の保守など幅広い業務に従事。結婚・出産を経て、映像・音楽編集を中心とする「BEARRING(ベアーリング)」を開業した。
現在は、小学生2の子どもを育てながら、「BEARRING」での制作活動や「うつのみやデジタル女子部」での活動に取り組むほか、育成会長や消防団員として地域活動にも携わっている。
今までのキャリアと現在の活動について教えてください。
〇 ものづくりへの思いを、仕事につなげて
子どものころからパソコンや機械など、ものづくりが好きでした。「新しいことに挑戦し続けられる仕事がしたい」と思い、卒業後は放送局で技術職として働きました。結婚を機に退職し、子育て中心の生活になってからも、「何かできる自分でいたい」という思いはずっとありました。退職後もテレビ局時代の知人から依頼をいただくことがあり、前職に関係のある業務ではありませんでしたが、これまでの経験を生かして誰かに喜んでもらえることにやりがいを感じていました。
そんな中、「依頼件数も増えてきたから、仕事にしてみてはどうか」と声をかけていただいたことが転機になりました。「それなら、とりあえずやってみよう」と、「BEARRING」を開業しました。開業後は仕事を増やしていきましたが、次第に自分の働き方を見つめ直すようになりました。仕事をセーブし、改めて学び直したいと思っていた時に出会ったのが、宇都宮市の「女性のデジタルスキル習得・就労支援事業」です。そこで仲間と出会い、現在は「うつのみやデジタル女子部」(デジ女)の活動にも参加しています。
仕事と子育てを経験する中で、働き方への考えはどのように変わりましたか?
〇 一人で頑張りすぎない働き方へ
開業当初は、「とにかく頑張ろう」と、子どもたちを寝かせてから深夜まで仕事をすることもありました。しかし、仕事を増やすほど家事や育児にしわ寄せがいき、「何のために働いているんだろう」と考えるようになりました。
そこで、何でも一人で抱え込むのではなく、近所の友人や母にも頼るようになりました。「夜はもう寝よう。起きている時間にできることをやろう」と割り切ることで、無理をして頑張り続けるのではなく、自分や家族に合った働き方を考えられるようになりました。
就労支援事業や「デジ女」で、「できるよ」「やってみようよ」と背中を押してくれる仲間と出会えたことも、大きな支えになっています。一人では形にできないことも、みんなと一緒なら方法を見つけられるかもしれない。今はそう思えるようになりました。
ご自身の経験から、「自分らしく生きること」について、どのように考えていますか?
〇 「女性だから」にとらわれず、自分らしい選択を
もともと「女性だから」ということをあまり意識せずに生きてきました。でも振り返ると、20代の頃は「女性だからと言われたくない」「男性に負けたくない」という気持ちから、知らず知らずのうちに無理をしていた部分もあったのかもしれません。一方で、子どもを産み、自分で子育てをする時間を持ちたいという思いも強く、結婚を機に退職する道を選びました。今は、仕事と家庭のどちらも同じように頑張る「両立」を目指すのではなく、その時々の自分や家族に合ったバランスを大切にしています。
母親としてだけでなく、一人の人間としても、自分が納得できる生き方をしていきたいです。また、自分なりに仕事や活動を続ける姿を息子たちに見せることも、身近な男女共同参画の一つだと思っています。
「男だから」「女だから」と決めつけるのではなく、一人ひとりが自分に合った生き方や働き方を選び、その選択を周りも認め、支え合える。そんな社会になってほしいと思います。
暮らしていて感じる、宇都宮の魅力や今後への期待を教えてください。
〇 新しい挑戦を応援してくれる街
宇都宮は、女性活躍や子育て支援に積極的で、新しい取り組みにも柔軟に向き合ってくれる街だと感じています。特に感謝しているのは、就労支援事業が終わった後も、「うつのみやデジタル女子部」のつながりが続いていることです。事業を実施して終わりではなく、そこから生まれた活動にも目を向け、応援してくださることに希望を感じています。
一方で、実際に支援を利用しようとした際に、相談のしづらさを感じたこともありました。制度を整えるだけでなく、必要な人が安心して相談でき、適切な支援につながることも大切だと思います。利用する人の声を取り入れながら、より頼りやすい仕組みが整い、新しいことに挑戦する人を応援する輪が広がっていけばうれしいです。
地域や子どもたちと関わる中で、大切にしていることは何ですか?
〇 デジタルの力を、身近な地域にも
地域では、育成会長も経験させていただいています。自分の子どもを大切に育てたいと思う中で、周りの子どもたちも地域で見守っていくことが大切だと感じるようになりました。私自身も、子どもたちにとって「ちょっとおもしろい近所の大人」の一人になれたらと思っています。育成会では、これまで身につけてきたデジタルスキルを生かし、会計や引き継ぎのデータをオンラインで共有したり、スマートフォンから確認・入力できるようにしたりと、役員の負担を減らし、活動しやすい仕組みづくりに取り組んでいます。
また、子どもが所属する合唱部では、練習を撮影して振り返ったり、パートごとの音源を用意したりしています。こうした経験から、デジタルは記録を残すだけでなく、工夫次第で子どもたちの学びや成長を支える力にもなると実感しています。
地域活動は、その大切さが目に見えにくいこともあります。それでも、子どもたちが地域の中で健やかに育つことが、地域の元気にもつながると思います。人と人とのつながりを大切にしながら、これまでの経験やスキルを生かし、これからも自分にできる形で地域に関わっていきたいです。

これから、どのような働き方や生き方を目指していきたいですか?
〇 自分らしく働きながら、可能性を広げて

安定した収入を得て、自分の生活を支えられるようになることが目標です。ただ仕事を増やすのではなく、家族も自分も元気に過ごせることを大切にしながら、自分に合った働き方を見つけていきたいです。また、これまでの活動を通して出会った人たちとのつながりを大切にしながら、新しいことにも挑戦していきたいと思っています。一人ですべてを抱えるのではなく、それぞれの得意なことを持ち寄り、一人ではできなかったことを一緒に形にしていきたいです。そうした経験を重ねながら、できることを少しずつ増やし、できるだけ長く社会と関わり続けていくことが目標です。
最後に、「何か始めたい」と思いながら迷っている方へ、メッセージをお願いします。
〇 自分にできることを、一つずつ
私自身もまだ迷ったり、もがいたりしている途中なので、大きなアドバイスができるわけではありません。それでも、今の自分にできること、やるべきことを一つずつ一生懸命やっていけば、きっと背中を押してくれる人や、応援してくれる人に出会えると思っています。
私もこれまで、たくさんの人に支えてもらいながら進んできました。迷った時も、まずはできることからやってみる。その気持ちを大切にしながら、これからも一歩ずつ前に進んでいきたいです。
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