(9)口をつけたペットボトル飲料、飲み残しは飲まない方がいい?
口をつけたペットボトル飲料、飲み残しは飲まない方がいい?
概要
口をつけて飲んだペットボトル飲料を、ついうっかりそのままにしてしまいました。その後は、あまり飲まない方がいいような気がするのですが、実際はどうなっているのでしょうか。
分析方法
ペットボトルなどの容器に直接口をつけて飲んだ場合、口の中の細菌が容器に入り込むことが予想されます。そして、これらが条件によって増殖し、品質が落ちたり、腐敗したりすることが考えられます。そこで、次のような実験を行いました。
被験者(当所職員)で、次の5種類のペットボトル飲料について、容器に口をつけて半分程度飲み、残りを夏場の室内の気温を想定した30℃のふ卵器に静置し、直後から48時間後までの一定時間経過後、それぞれ菌数を計測しました。
ペットボトル飲料の種類
- ミルクコーヒー
- 麦茶
- スポーツ飲料
- 果汁100%オレンジジュース
- 緑茶
分析結果
30℃で一定時間放置したミルクコーヒー1mLを、寒天培地と混ぜて培養したものです。白い粒に見えるものが増殖した細菌のコロニー(集落)です。このように培養して発生したコロニーの数から、元の飲料にどれだけの細菌が含まれていたかを計測する方法で、各時間経過後の細菌数をそれぞれ測定しました。
細菌がより多く増殖した順に示すと、結果は以下のとおりになりました。
第1位 ミルクコーヒー
48時間放置した間に、もっとも細菌数が多くなったのは、ミルクコーヒーでした。口をつけて飲んだ直後の菌の数は1mLあたりおよそ1000個でした。24時間後には1万倍のおよそ1000万個、48時間後には3億個以上もの細菌が確認されました。
菌は糖分やタンパク質を栄養として増殖するので、これらの栄養分が多く含まれるミルクコーヒーで大幅に増殖したと考えられます。
第2位 麦茶
2番目に細菌が多く増殖したのは麦茶でした。24時間後におよそ9000個、48時間後には3万個を超えました。麦茶は穀物である大麦の種子が原料となっており、炭水化物を比較的多く含むことから、細菌が増えたと考えられます。
他の飲料の結果
次の3種の飲料については、全体的に細菌数が減少する結果となりました。
緑茶は飲用直後に約1700個あったものが、24時間後には10分の1以下に減少し、48時間後には100個程度になりました。緑茶には「カテキン」という細菌の増殖を抑制する作用のある成分が含まれているため、この働きにより菌数が減る結果であったと推測されます。
果汁100%オレンジジュース、スポーツ飲料は飲用直後から100個程度でしたが、3時間後にはほぼ0個になり、以降増えることはありませんでした。オレンジジュースやスポーツ飲料は、液性が強い酸性(pH3.5程度)であったことから細菌の増殖を抑える効果があったと考えられます。
pHと細菌の増殖の関係
pHは、7.0で中性を表し、これより小さい数値で酸性を、大きい数値でアルカリ性を示します。
一般的に細菌の多くは、pHが4.6より小さい酸性の状態では、増殖が抑えられると言われています。
対策など
元々口内にいる細菌が、口をつけて飲んだペットボトル飲料等に入り込んだとしても、それはただちに危険な状態とは言えません。しかし、多くの細菌が増殖した状態になれば、飲料の品質を落としている可能性があります。また、細菌の増殖に適した温度帯で放置したり持ち歩いたりしながら、容器の開閉や口をつけて飲用を繰り返すうちに、食中毒菌や腐敗菌が混入する可能性も生まれます。これらの有害な細菌が増殖すれば食中毒等の健康被害につながりますので、細菌を増やさないよう注意が必要です。
また、今回の実験では、緑茶、スポーツ飲料、果汁100%オレンジジュースにおいては、細菌の増殖は見られませんでした。しかし、多くの種類の飲料が市販されており、上記3種と似た種類の飲料であっても、必ずしも細菌が増えにくいものばかりとは限りませんので、やはり注意する必要があります。
細菌をふやさないためには?
- グラスなどの他の容器に移して飲むこと
口を直接つけなければ、口の中の細菌がペットボトルに入ることは防げます。 - 冷蔵庫に保管すること
仮に細菌がペットボトル内に混入したとしても、増殖しにくい温度を保てば増えることはなくなります。 - 早めに飲み切ること
より短時間で飲み切ってしまえば、細菌が増殖する時間も、他の食中毒菌等が入り込む機会も減らすことができます。
軽くて割れにくく、中身が漏れる心配もあまりないため、多くの方が日常的に利用されている便利なペットボトル飲料ですが、取り扱い方を誤ると思わぬ危険があるかも知れません。これらの注意事項を守って安全に利用してください。
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